人気ブログランキング | 話題のタグを見る

南国土佐をあとにして 2010秋遍路9

宿毛から続く田んぼの道をてくてく歩く、途中で松尾峠に入る案内看板を右に折れても、まだ、しばらく歩く。

南国土佐をあとにして 2010秋遍路9_e0008223_2221369.jpg峠っちゅうくらいだから山道でしょ?いつまで平坦な道なんかなぁ・・・?
時間的にも、そろそろ山道に入って行かなあかんはずなのに、いつまでも平坦な道なのだ。

写真は、放し飼いにされてるコケコッコたち。

「もしや、道まちごーた?」
いや、それはないはず。でも、そろそろ山道にさしかからないとおかしい。
悶々としながら歩くうち、右手に看板が見えた!

『← 松尾峠』

キターーッ!!
山道スタートちっくな、こんもりとした山へ続く道と、今歩いている道の分岐にその看板は立っていた。
よしよし、この山の方の道なのね。ラジャー♪

今までのアスファルト道から、土の道へ足を踏み入れる。緩やかな坂を登っていく。

この山では、文旦を栽培しているらしく、まだ青々とした大ぶりの実がたくさんぶら下がっていた。
土佐の文旦は、ちょっとグレープフルーツのようなあっさりさっぱりちょっぴり苦味もあって、甘けりゃおいしいなんて言ってるオコチャマにはこのおいしさはわからんオトナテイストな果物だ。
文旦のあのなんともいえない爽やかな香りと、ジューシィーな食感を想像しつつ歩くうちに、坂がどんどん険しくなっていく。

そうこなくっちゃ!山道ウェルカムやわ!そやかて峠を越えるんやもん、どんどん険しくなっていかんとねー(∩.∩)

坂道が二股に分かれているところへきたが、そのまま直進。しだいに文旦の密度がアップしてきた。文旦まみれの山やなー。命名!『文旦密集山』
なんてムダ口叩いてるうちは、まだ余裕があったワタシも、足元が悪くなり、道が文旦の隙間に埋没していくうちに、ほふく前進で行かなければ進めないようになった。

背中のザックが枝に引っかかり、菅笠をゴリゴリこする文旦の木々。それでもインディージョーンズのテーマを歌いながら前進する。(ターッタラタータタラーッ♪タータラタータータラーラーラー♪)

文旦の生い茂る枝を掻き分け掻き分け進むうち、「ちょっと、これちゃうんちゃうん?」と思い始めた。が、すぐに「いや、この艱難辛苦の先にこそパラダイスがあるに違いない!」と、不安をかなぐり捨てて進んだ。

そして、行き止まりだった。

ガ━━━(゜ロ゜;)━━ン!!

「やっぱちょっと変やなぁと思てん。」と、自分に言い訳しながら今来た道を振り返ってみると、"よくもまぁこんなところを無理クリ通ってきたよなぁロード"が、生い茂る文旦に隠れて先が見えなくなっている。
やっぱりさっきの分岐で直進してきたのが間違いだったのだ、さらに右折れの坂道を上っていくのが正しい道なんだと、思い直し、また文旦の枝に顔を引っかかれたりザックを持ってかれそうになりながら分岐点まで生還し、そこから二足歩行で右折れの坂道へと登った。結構キツい。キツすぎる・・・。

そして、道がなくなった。

本日二度目のガ━━━(゜ロ゜;)━━ン!!

あかん。こないなったらふりだしにもどって、最初の看板のところまで行って考えよう。
そう思った瞬間だった。

ズッデーン!

坂道の頂点で気が緩んだ瞬間に、見事にコケた。おケツをしたたか打ち、もう踏んだり蹴ったり・・・。
この転倒ですっかり気分が萎えてしまった。「もう、いやや・・・」
手をすりむき、ズボンは泥だらけ。テンションだだ下がりで文旦山を下る。
心身ともにクタクタになりながら、そして、あんなに好物だった文旦を嫌いになってしまいつつある自分に「文旦を責めちゃいけない、文旦には罪はないんだよ」と弁解しながら最初の看板地点まで戻ってきて、力尽きた。

ザックを下ろすのも忘れて、そのままアスファルトにへたりこんでいると、向こうのほうから軽トラックがやってくるではないか!
遭難して無人の鳥島に漂着し、およそ5ヶ月後にアメリカの捕鯨船を見つけた時のジョン万次郎の喜びは、きっとこんなだったろうと思う。(ちょっと大げさです)

「おぉぉぉ~いっ!おぉぉぉぉぅぅいっ!」

ワタシは、道に立ちはだかり軽トラックの運転席側の窓にしがみついた。
そして、山狩りを逃れる犯人みたいに文旦山を彷徨っていたことを話し「松尾峠はどこですか?」と訊ねた。
軽トラには老夫婦が乗っており、おじちゃんが運転席から降りてきて今やってきた道を振り返り、その先にそびえる山を指差した。

「あそこ」
「あの山の上に鉄塔みたいなが見えるじゃろ?あそこで6合目くらいかの」

山、そびえてるやん。ぐわぁーーっと高いやん。そのほぼ頂上にあるあそこが松尾峠の6合目ですってーーー?!

延光寺のあと、宿毛まで路線バスに乗って稼いだ時間は、とっくにチャラ。いや、余計に時間くってしもた。
目の前がクラクラしているワタシに「今から峠越えるんか?はよぅ行かな日ぃ暮れるでぇ」と、おじちゃんのダメ押し。
文旦山探検で疲労困憊しているワタシを置いて、軽トラのおじちゃんは走り去っていった。

おじちゃんが指差した鉄塔をはるか彼方に仰ぎ見て、”噂の松尾峠”に、まだ一歩も足を踏み入れてないという事実に愕然とし、再び歩き始めるまで、しばらく時間が必要だった。

by ke-ko63 | 2010-10-14 22:23 | お遍路に行きたい | Comments(8)  

Commented by mikeblog at 2010-10-14 23:35
匍匐前進・・・のあたりで私もこれは道が違うなー、と思いました。きっと間違える人が多いから行き止まりまで行って帰ってくる、つまりみんなが往復するから正しい道よりよく踏まれてますますみんなが間違えるようになる、と。山登りだったら間違いやすいところには木にテープが巻いてあったりペンキで印がつけられていたりするんだけど松尾峠には無いんですね。どこでもそうですが初めてのところはドキドキ不安です。頑張って文旦山を制覇してね。
Commented by クマタカ at 2010-10-15 11:14 x
大阪のNabeさんも松尾峠への道で文旦畑(山)に迷い込んだとブログに書かれてましたね。
迷いやすいトコがやっぱりあるんだ。
こりゃきっと土地のキツネのしわざだな。土佐に名残を惜しむ旅人が通ると、文旦畑に誘い込んでもっと土佐を味わっていただこうという心遣いです。
コーンという声、聞こえませんでした?
Commented by ke-ko63 at 2010-10-15 21:28
>クマタカさん

峠の休憩所で一緒になったおじさんも、「あの文旦畑めー」って言ってましたよ。
あそこでほんとにくたびれ果てました。
『七度狐』って落語思い出しましたよ。だって、よくよく考えたら文旦かきわけかきわけはいずりまわるなんておかしいですもんね。
でも、そのときはちっともそんなふうに思わなかったし…。
土佐は修行の道場。
って、どんだけ修行さすねん!って思いました。はい。
Commented by ke-ko63 at 2010-10-15 21:30
>ミケさん
文旦山に翻弄されるの巻。でしたよ、まったく。

山ガールのミケさんからすると、なんでそんなとこ行くのよー
って思われたでしょうが、こちとら必死のパッチ。
なんの疑問も感じずに前進しておりました。あぁ、オバカ。
だめですねぇ。ほんと…
Commented by Nabe at 2010-10-16 21:42 x
わんばんこ!

どうやら私とほぼ同じ地点で迷われたようですな。

しかし、、、、ククッ、、、、ククッ、、、、いやいや笑てまへんで。笑てまへん、、、ホ、ホ、ホンマでっせ、、、、ククククッ、、、

でもクマタカさんのご推測、ズバリやったりして、、、。
ということではりQさん、アレはあたたかいお心遣いやったとお互いにありがたく受け止めまひょか。
Commented by ke-ko63 at 2010-10-17 13:05
>Nabeさん

わんばんこ・・・て、あーた…ヤレヤレ。

人んこと笑えますんか?あの文旦山にさしかかる看板の角度が微妙なのが悪いんですって!

ま、なにはともあれかえってこれてよかったよかった。
Commented by Nabe at 2010-10-20 00:22 x
>人んこと笑えますんか?
いやいや嬉しかったんですわ。はりQさんがおんなじことしてくれはったんが。
ガ━━━(゜ロ゜;)━━ン!!、、、っちゅうのもね、同じ間違いをした者としてその度合いがようわかります。ホンマ、ショックやったでしょ。あんな山ン中やしね。

やっぱり看板の向きが微妙やったんやね。私はその看板のことはよう覚えてないんやけど、、、。
ちなみにその看板の角度は直してきはりましたか?それともそのまま?
Commented by ke-ko63 at 2010-10-20 22:04
>Nabeさん
いやいやご同輩。ほんま、あの文旦山は魔の山でっせ。
看板?はぁ?いったいなんのこってっしゃろ?
名前
URL
削除用パスワード

<< 南国土佐をあとにして 2010... 南国土佐をあとにして 2010... >>