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おばすな土佐日記 vol.31 -第4回遍路行-

タクシーで青龍寺に乗りつける自称歩きへんろ。
思い起こせば、徳島の海近くで軽トラのおにぃさんが「乗せてってやる」というのを頑なに固辞したワタシ。
後輩には「クルマで宿まで送れ」と強要し、地元のおじさんのクルマにも喜び勇んで乗っけてもらい、迷子になったのをいいことに高級外車に目をつけて、お接待を打診する。挙句にタクシーでお寺に乗り付けるようになってしまったダメへんろ。あぁ・・・。

とはいえ、今回ばかりは、今回だけは異例中の異例なのだ!どうがんばってみても17時の納経所閉店に間に合わないのだ。悶々としているところへやってきた空車のタクシーは、お大師さんがお遣わしになったに違いない!
そうだ、これは「タクシーに乗ってもかまんがよ」というお大師さんの声なのだ!(お大師さんは讃岐人だったけど)

オノレを納得させたところで、運転手さんの一言が辛辣だった。「歩きゆぅが?お遍路さんはクルマに乗りたがらんと思たち・・・」
あちゃー。すんませーん。
「ま、たまにはえぇが・・・」と言ってくださったけれど。

おばすな土佐日記 vol.31 -第4回遍路行-_e0008223_21395457.jpgおばすな土佐日記 vol.31 -第4回遍路行-_e0008223_2140463.jpg青龍寺到着。
閉店20分前。見上げるとオットロシー石段が続いている。や、うわさには聞いてたけどこれほどとは・・・。
今から、これを駆け上がって本堂と大師堂でお参りを納め、また石段を駆け下りてきて納経所閉店に間に合うだろーか?(青龍寺の納経所は珍しく境内ではなく、石段の麓にあるのです)

ワタシの前に立ちはだかる強烈な石段。近くにある明徳義塾高校に、在学中だった朝青龍は、この石段で足腰を鍛えたのだという。四股名も、この青龍寺からとったのだそうだ。
横綱ばりの丈夫な足腰のワタシであっても、微妙な時間だ。う~ん・・・。

仁王立ちで石段を仰いで唸っていると、左側からお声がかかった。
「時間~ん一杯です」(うそです。)
「先に納経して行きなさ~い」
すぐ左手の納経所の中から聞こえる若いお坊さんの涼やかな声だった。
スタスタと声の主へ近づき「えぇんですか?」と聞き返す。

納経は、本来お参りを納めたシルシとしていただくものであり、お参り前にいただくのはご法度であると聞いたことがある。中には、お参りもせずに納経所へ直行しそのまま次のお寺へ急ぐスタンプラリーのような人もいると言う。それではありがたみもまったくないではないか。八十八カ所全ての納経がそろった納経帳は高額で取引されている。そんな納経帳に果たしてご利益はあるのだろうか?

おばすな土佐日記 vol.31 -第4回遍路行-_e0008223_21411623.jpgおばすな土佐日記 vol.31 -第4回遍路行-_e0008223_2141495.jpgそんな思いもあって、お参りに前に納経していただくことに抵抗があった。けれども・・。
そんな微妙な表情をしているワタシの心を見透かしたように「納経が気になって慌ててお参りしても意味がないですからね。落ち着いて、じっくり時間をかけてお参りください。」と言ってくださった。
なるほど。
ワタシは、まだ若いお坊さんのお言葉に素直に従い、先に納経していただくことにした。
納経帳を差し出し、お坊さんのスラスラ動く筆先を見つめながら考える。
そもそも、時間に追われすぎの一日だ。清滝寺を2度往復したことも、自分の不注意からだ。時間が足りずタクシーに乗ったことも、先に納経していただくことも、自分の都合をねじこもうとするからスケジュールにひずみがでてしまうのだ。
もっとおおらかに、一日日程をずらすくらいの気持ちでお参りしないとあかんのとちゃうやろか?
荷物を先に翌日の宿に届けてもらうことも、自分の都合だ。だから、スケジュール変更もしにくくなってしまうのだ。あぁ・・・。

修行の道場 土佐も後半にさしかかったというのに、まだまだ修行が足りんなぁ・・・とため息をついていると、「はい。ゆっくりしっかりお参りしてきてください」と、ニッコリ笑顔のお坊さんが納経帳を手渡してくださった。

ザックを背負いなおし、さて石段をば・・・と思ったところへ、わらわらとお参りの方々がみえた。皆さん一様に焦っておられる。背後から「先に納経しますよー」とお坊さんの声が聞こえた。
アハハ。似たような人ぎょーさんいてはるわ。
「ワタシも今しがた先に納経していただいたとこですねん(*´ー`)」と、ひとりのご婦人に声をかけて会釈をし、「ではお先に。」と石段をのぼりはじめた。

by ke-ko63 | 2009-11-10 21:43 | お遍路に行きたい | Comments(6)  

Commented by 阿波のへんろ at 2009-11-10 22:11 x
すごーい石段ですね。
納経、間に合って良かったです。

私は団体さんを見かけたらいつもお先にです。(^^ゞ
Commented by mikeblog at 2009-11-10 23:43
この若いお坊さん、気が利くわー。駆け込み乗車というところかな。よかったですね、タクシー代が無駄にならなかったしー。
Commented by まな at 2009-11-11 13:09 x
こんにちは、そのお坊さんの機転が嬉しいですね。
タクシーにしろお坊さんの一言にしろ、ke-ko63さんのお遍路への想いがあってこそのお大師さんからの御力添えなんだと思いますよ。でもこの切迫感、めちゃくちゃわかります。
通し打ち、テント持参野宿の歩き遍路でもない限り、時間との闘いなんですよね・・・帰りの乗りものの時間、宿泊所へ入らなければならない時間・・そして納経所の時間・・私の場合ですが、歩いている時ずっと時間に追われていて、そんなんじゃ意味ないでしょーがと知り合ったお坊さんにも言われました。でもでも自分が時間を守らないと、宿の人にも仕事場や家族にも最終的に迷惑をかけてしまうんですよね。今回の紀行文を読んで、その時の焦りや苦しさ矛盾した想いを今体験しているかのごとく切実に思い出しました。
こちらを拝見してて、またふつふつとお遍路行きたい病が湧き上がってくるようです。
こちらの文章のお力か、その場その場の勢いや空気がそのまま伝わってくるようで、あああ、お遍路行きたい!!
もう本出されて下さい。絶対買います。
そしてこれからの旅模様、ますます楽しみにしています。
Commented by ke-ko63 at 2009-11-11 21:49
>阿波のへんろさん
ここで毎日、足腰を鍛えていたという朝青龍。鍛えられます、ここならば…。
Commented by ke-ko63 at 2009-11-11 21:52
>ミケさん
ワハハ駆け込み乗車。ほんまそんな感じです。
滑り込みセーフ!ってね。
お若いけれど、なかなかいいことおっしゃるお坊さんでした。
Commented by ke-ko63 at 2009-11-11 22:01
>まなさん
いやーん、そんなそそのかされたら出版しちゃうかもー
って、ウソです。そんなサイノーありませんて。(^_^;)
区切り打ちだとなかなか難しいですよね。でも、いつかいつか通し打ちで四国を歩いてみたいと思います。
寄り道しほーだい、おいしいもん食べほーだい、気に行った宿には何泊でもしたり、そんなのんきな歩き遍路をやってみたいなぁ…。
まなさん、さぁお四国レッツらゴーですぞーーーっ!
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