南国土佐をあとにして 2010秋遍路5

乗車率60%ほどか?朝早くの特急にしては結構な混み具合。
無事に、座席を確保して荷物をおろす。

地図を見ながら今日の行程を予習していると、途中の停車駅からおばあさんが乗り込んできた。たぶん、おばあさん。限りなくおじいさんに近いミタメだけど、たぶん、おばあさん。
かなりインパクトのある装いの、たぶん、おばあさんは、ワタシの前の席に目をつけ、すでに窓際に座っているおばさん、(これは確実におばさん)に声をかけた。

「外の景色を見たいから席を譲ってくれ」

おばさんは、一瞬たじろいだように後ろの席のワタシは感じた。いや、後ろの席のワタシでさえ、たぶんおばあさんの大胆発言に、ちょっとのけぞった。
おばさんは、きっと景色を見たいから窓際に座ったんだと思う。だってワタシもそうだもの。
なのに、あとから乗ってきた上に他の空いてる席には目もくれず「ココがいいの!」とばかりに、てこでも動かない様子。
ココは自由席の車両。でも、たぶんおばあさんは、歯の抜けた顔でニッコリ笑ってる。

窓際席をめぐる攻防。

さぁさぁどうする、どうなる・・・と、固唾を飲んで見守っていると、おばさんは席を立って指定席の車両へ行ってしまった。たぶんおばあさんは、「あぁ、空いた、空いた!」と大きな声で、どっかと窓際席に腰をおろした。
(空いたんじゃなくて無理やり空けたんでしょーが!)と、たぶんおばあさんには聞こえないくらいの小さな声でツッコミ入れるワタシ。

さっきのおばさんが人の良さそうな顔をしていたからなのだろうか、気の毒なことだ。
席を強奪された上に、指定席料金払わされて、これを災難と言わずしてなんという・・・。

ま、被害者は出したものの、これでこの車両にも平穏が訪れる・・・はずだった。

が、このたぶんおばーさんの前衛的なイデタチもさることながら、少なく見積もってもおそらくここ1~2週間はお風呂に入ってらっしゃらないような、えもいわれぬ香りが前方より、否、間違いなくおばあさんから漂ってきはじめた。
いや、ひとさまを見かけで判断してはいけない。ましてや、アタシャこれからおへんろの続きを歩く身の上じゃあないか。こんな心がけではお大師っさんにシバかれる・・・。

ひたすらお大師っさんに謝っていると、なにやら前から聞こえてきた。なるべく口呼吸しつつ聞き耳を立てていると、おばあさんが誰かとしゃべっているのだ。あぁ、携帯?いや、ひとりごと!それももっすごデカい声でのひとりごとだ。
しかも、落語の掛け合いのように一人二役みたいな様子。
通過する駅を見て懐かしむ人(仮にAさん)と、いつまでも昔のことばかり言ってても仕方ないとAさんを叱る(仮にBさん)てな具合に掛け合いのような、実に楽しそうなひとりごとなのだ。

馥郁たる香りを惜しげもなく車内に充満させながら、ひとり漫才に興じるたぶんおばあさんが一人二役ではあきたらず、ワタシを登場人物Cとして参加させるべくシートをくるりと回転させて、差し向かいの仲良しシートにしたらどうしよう・・・、さっきのおばさんは、もしやそこまで想定した上で二次被害を未然に防ぐべく差額料金払っての指定席へ移動したのかも・・・。
あぁ・・・。

南無大師遍照金剛・・・。

山歩きで前にも後ろにも誰もいなくて、なのに隣の草むらからガサガサッと音がしたときや、あきらかにイノシシ臭を嗅ぎ取った時、山頂まであと少しなのに風が吹き霧が深くなって雷鳴が遠くに聞こえてくる・・・身の危険や不安を感じた時に唱えていた、お大師っさんの御宝号が口をついて出てきた。

列車は次第に速度を緩め、停車駅のホームに入っていく。
土佐久礼駅に到着すると今までひとりでもっすご盛り上がってた前の席のおばあさんは、スッと席を立って列車を下りていった。

あぁ、助かったぁ・・・。お大師っさん、ありがとうございます。

こんなことにお大師っさんを引っ張り出したら、またシバかれるかもしれないけれど、ともかく、これからいよいよおへんろスタートって時にダメージを受けることは免れた。

中村駅でくろしお鉄道に乗り換え、目的地の平田まで平穏無事にプチローカル線の旅を満喫した。
無人の駅に降り立ち、空を仰ぐとすでに太陽はさんさんと照りつけている。
10:30。いよいよ歩きへんろのスタートだ。
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by ke-ko63 | 2010-10-04 22:23 | お遍路に行きたい | Trackback | Comments(6)  

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Commented by 六根清浄 at 2010-10-05 00:54 x
なんとも不思議なおばあさんですね。席を譲られたおばさんは実に気の毒なことでしたが、このおばあさんがはりQさんの前の座席にわざわざ座られたというのも何か因縁があったのかもしれませんね。
『通過する駅を見て懐かしむ人(仮にAさん)と、いつまでも昔のことばかり言ってても仕方ないとAさんを叱る(仮にBさん)てな具合に掛け合いのような、実に楽しそうなひとりごとなのだ。』
はりQさんもなにか感じておられるのでは・・・?僕も昨年の5月に宿毛までの道中、列車に揺られながら「土佐の景色も見納めか・・・」としみじみ車窓を眺めていた思い出があります。かつて一生懸命に歩いた国道56号線の景色への思い入れはひとしおで、これでお別れかと思うとちょっと悲しくなったりもしました。でも「過去の思い出に縛られていても仕方がない、次は伊予の国が待ってるんだ」と気持ちを切り替えました。そうしないと、やりきれなかった・・・。
おばあさんの落語の掛け合いは、実は御大師さんからのエールだったのでは?と、文面を読んで感じました。あくまで僕の妄想ですが・・・。

Commented by クマタカ at 2010-10-05 08:58 x
昔々、禁煙車なるものがなかった頃は、車内に漂う紫煙のいがらっぽい臭いを避けながら車窓を眺めたものです。(今はほとんどが禁煙車両、隔世の感があります)
それに比べれば・・・、とはいえ垢じみた馥郁たる香りはご遠慮申し上げたいなぁ。
私ならデッキに出てしまいますね。我慢してるより立ってる方がラクだもん(時々うらめしそうに車内をのぞいたりしますが)。
お遍路の入口から「すべてをありのまま受け入れる」という試練を課されたはりQさん。修行の道はキビシイ~!
Commented by mikeblog at 2010-10-05 10:11
席を立たれてしまったおばさんが強気な方だったら、目の前で掛け合い漫才が見られたかもね。あんまり見たくないのに見させられてしまうという・・・オバサンのワガママは何処も同じ、気をつけなくちゃ。
大声で独り言おじさん(おじーさん)は見たことがあります。スーパーの中で、最初は携帯で話しているのかと思ったくらいはっきりした独り言でびっくりしました。やはり複数の相手に次々に話しかけていましたね。
Commented by ke-ko63 at 2010-10-06 19:14
>六根清浄さん
なるほど。
たぶんおばーさんとの出会いも、お大師っさんのお引き合わせだったのかもしれません。
土佐は修行の道場。最後の最後にチョー修行を予感させる出来事だったんだ、あれは…と思わせるような出会いでした。

阿波から土佐へ入った時に比べて土佐の名残は想像以上でした。長かった。でも、それだけじゃなくて何とも言えない感慨深いものがありました。
おばあさんの登場がなければ、ワタシも六根清浄さんのように車窓の景色に涙を流して、おセンチ遍路になってたのかもしれません。そう思うと、あのおばあさんの登場は意味深いものだったように思います。
Commented by ke-ko63 at 2010-10-06 19:21
>クマタカさん
え?昔は禁煙じゃなかったの? 
と、一応ボケときます。

芳醇な香りをまき散らすたぶんおばあさんの掛け合い漫才に飛び入り参加してもよかったのかも…と、今になって悔やまれます。

虎穴に入らずんば・・・いや、ワタシにない”根性”を試されたのかもしれません。
Commented by ke-ko63 at 2010-10-06 20:48
>ミケさん
おばあさんのそれは、わがままというより天真爛漫って感じでした。
ただ純粋に「景色見たい」だから「代わって」みたいなね。
ワタシも、席を代わってほしいと思ったことあるけど、それをお願いするのはさすがに気が引けて、言ったことはないけれど念力を送ることはよくあります「あなたはだんだん席を譲りたくな~る…」てな調子のやつをね。いつも失敗しますが。

一人漫才って、もしかして流行ってるのかも?
ちょっと調べてみなあきません。

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