師匠のお接待 -第2回お遍路行19-

お参りを済ませ次の寺を目指すべく山門の方へ向かう途中、どこからともなく鐘衝き師匠がやってきて「ちょっと休憩していかない?」と誘うので「じゃあ」てんで山門のベンチに腰を下ろす。師匠はというといつのまにか、クーラーボックスをたすき掛けで走ってきてベンチでくつろぐワタシの前でフタをオープン。「どれでも好きなの選んで」と氷に埋もれてキンキンに冷えていそうなペットボトルの飲み物をかき分け、ラインナップを見せてくださる。
「え!いいんですか!?ありがとうございます。」鐘衝き師匠は飲み物のお接待もしてくださるのだ。ありがたい。
あつかましくもクーラーボックスの中身をまさぐって、1本いただいた。するとすかさず「この中から1つ選んで!」と今度はSOYJOYをトランプを持つように広げて見せてくださった。そういえば、ここ徳島は大塚製薬のおひざ元。なるほどだからSOYJOYですね。とかなんとか余計なことを言いながらイチゴ味をいただいた。

お礼に、納札をお渡ししてもいいものかどうか迷ったけれど、おずおずと「受け取っていただけますか?」と1枚お渡しすると「ありがとうございます。頂戴します」と両手で受け取ってくださった。うれしい。お接待を受けたらお礼に納札をお渡しするのが礼儀のようなものなのだけれど、納札にはランクがあって四国巡礼の周回数によってその用紙の色が異なり、100回以上回っておられるお遍路エキスパートになると錦の納札をもってらっしゃるそうだ。錦の納札を頂けるというのはそれそのものがたいへんありがたいとされ、お守りとして大事にされる。しかしワタシの持つ納札は1周目~4周目のお遍路さんが持つ、いわば若葉マークである白色なのだ。そんな納札でもはたして受取っていただけるであろうか?とためらわれるので、これまでもお接待を受けた折にお渡ししたい気持ちはあっても出しそびれてきたのだった。

鐘衝き師匠は、時々こうしてお遍路さんにお接待をなさっているそうで、お礼にもらった納札を3か月おきくらいに高野山へ納めに行ってらっしゃるそうだ。その際、大阪に定宿がありワタシが大阪から来たことを話すとしばし地元話で盛り上がる。徳島へきて地元の話をするなんてなんか妙な気持だけれど30分ほど師匠と語らった後、さてそろそろ…と腰をあげかけると「これ、持って行って」と小袋を手渡された。「りんごの蜂蜜漬けが入ってるから疲れた時に食べてね。」とどこまでもやさしい師匠に何度もお礼を言って山門を出た。

四国を歩くお遍路さんを地元の人はお大師さんだと信じて、お接待することで功徳を積むという。しかしそれだけだろうか?飲み物やお菓子、時にはお賽銭のお接待を受けることもある。ボランティアとはまた違う、四国にしかない文化"お接待"。昨年秋に4番大日寺で出会った結願したジョシ遍路の言葉を思い出した。「けっして先を急いではいけないこと、人との出会いを大切にすること、たくさんの人とお話しすること、それがお遍路だと思います」
お接待を受ける側としては、見知らぬ土地で一人で歩き、疲れ、不安になっているところへ温かい声をかけてくださるとホッとして気持が和む。どちらかというと人見知りな自分がお遍路中は誰とでも気軽に話ができて笑っていることに途中から気付いた。これはどうしてだろう?

師匠にいただいた小袋の中にB6サイズの"今時"と書かれたメッセージカードが入っていて中には次のような言葉があった。

お遍路さんへ

最近 川を見ましたか せせらぎの音に 耳をかたむけましたか 一休みで 心に潤いを
最近 山野の緑を見ましたか 鳥のさえずりを 聞きましたか 自然の中で一服 身体も深呼吸
最近 公園などに出かけましたか 花々と見つめあいましたか 休憩の一時に 瞳と気持ちに栄養を
最近 街中を歩きましたか 季節の装いをしてますか 時流の中で 自分を磨きましょう 心も体もうきうきしますよ
最近 海を見ましたか 潮騒に耳を 澄ましてみましたか 波の動きの中で 脳と心にリズムを
最近 空を見上げましたか 星・月をみましたか 静けさの中で 自分の変化を感じてみましょう
最近 何かを行っていますか あなたに何か変化が おこっていますか 今日までのお四国 いかがですか
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by ke-ko63 | 2008-09-07 10:51 | お遍路に行きたい | Trackback | Comments(2)  

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Commented by コイケダ at 2008-09-08 10:42 x
はりさん。

おへんろとか行ってなかったら、「くっさ~」って口走ってしまいそうな手紙ですよね?

でも、ぐいぐい心にしみちゃうでしょ、今なら。

・・・エエ年こいて、やっと「素直」になれそうなのかしら、アタシ達?
(いっしょにすんな~!ってかぁ?(汗))
Commented by ke-ko63 at 2008-09-08 16:20
>コイケダねーさん
そやねぇ…。たしかに"素直な自分"が、そこにはいたように思います。
一日の大半を感謝して過ごしていた気がします。

大阪に帰ってきて、また普段の暮らしに戻ると、四国と同じ空だったり風だったりするはずなのにどうしてこうも気分がどんよりしてしまうのでしょう。口をついてでてくるのは不平不満ばかりで、しかめっつらな毎日…。四国をぐるぐる回り続けるお遍路さんの気分がわからなくもないと思うこともあるけれど、戻るところがあるから歩き遍路に出るときのワクワク感もあるのだろうし・・・。
先日、徳島の有名連の踊りを間近で拝見することがあってもうその踊りを見ているだけでなみだ目になるワケですよ。『徳島』ってみるだけで涙腺が刺激されているようで…。いきおい、ツタヤで借りた眉山のDVDを夜中に見て泣きはらした目で翌日出勤したりして、アタシャいったいなにやってんだか・・・
八十八ヵ所の1/4まで到達したくらいで、2巡目はもっとあぁしてこうして歩きたい って思う今日この頃です。

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